無償の愛/かたあしだちょうのエルフ
ちょっと、悲しくなる話ですが。
子供も自分も好きな絵本の一つ。
改めて、第1刷を確認したら1970年。
2005年現在、第121刷と増版されている絵本。
(更に増版されているかもしれません)
「かたあしだちょうのエルフ」
/文・絵 おのき がく
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「エルフは、若くて 強くて 素晴らしく大きな オスのだちょうです。
何しろ、一息で千メートルも 走ったことがあるくらいです。
それで皆は、エルフ、エルフと呼ぶようになったのだそうです。
エルフとは、アフリカの言葉で千のことなのです。
エルフは、とても 子供が好きでした。
子供達は エルフの背中に乗せてもらって、広い草原を
ゆっさゆっさ 揺られながら、ドライブするのが大好きでした。
(中略)
エルフは すっと首を伸ばして ライオンの前に立ちはだかりました。
ライオンは後ろ足で立つと、エルフめがけてつかみかかりました。」
(※抜粋は漢字変換しております)
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エルフは、子供達を守るライオンとの戦いで、片足を失ってしまいます。
それからは、子供達を背中に乗せて散歩もできなくなり、初めのうちはエルフを助けてくれた仲間達も、それぞれ自分の家族のことだけでも大変なので、日が経つにつてエルフは仲間から忘れられていき、孤独になっていくのです。餌を自分で見つけられないので、木の根や石を食べ、カサカサになっていくのでした。
黒ヒョウが現れた時、エルフは最後の力を振り絞って叫び、仲間に知らせます。子供達を自分の背中に乗せて、黒ヒョウから守ろうと戦います。
それが、エルフにとって最後の戦いとなりました。
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「エルフ、ありがとう。」
と(子供達は)叫んで振り仰ぐと、皆はあっと 驚きました。
そこには、片足のエルフと同じ格好で、
素晴らしく大きな木が 空に向かって生えていたのでした。
(後略)
(※抜粋は漢字変換しております)
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最後にエルフの姿が、涙が、一年中涼しい木陰と泉を与え、動物の仲間達は楽しく暮らしました。というお話。
答えがわからぬが「無償の愛情」という壮絶さから目が反らせないから、子供も大人だって最後まで目が離せないし、語り継がれる本である所以だなと思います。
自己犠牲の愛、と美談に終えたくないなと思う話です。