表現力に堕ちる快楽。
愚かだな。それは愛ではない。
情事に甘えた錯覚への陶酔と堕落。
それでも一気に読了し、どちらも読後感は良くないのに旅の名残を惜しむように記憶を辿る。何を、作者は伝えたかったか?一々、考え耽ってしまう。身を滅ぼすほどに焦がす想いか。或いは不完全な自分を埋めるために虚空に身体を堕とす虚しさか。誰かに依存することは自分を見失う。幸せとは、思えない不幸に堕ちた彼女たち。
時空を行き来する物語であって、これは物語ではない。
犯罪が絡んだ短編集「鍵のない夢を見る」
ラブホテル舞台の短編集「ホテルローヤル」
共通するのは、どちらも直木賞受賞作品であること。登場人物が、どこにでもいる女と男であること。物語の途中で過去へ突如走るが回想ではなく、気づけば自ら時間旅に堕とし込まれる巧みな文の表現力。
本を読む心地よさの真骨頂かな。
だから自分は、本に溺れるのが好きだ。
夢中なほどラストを読めない。
物語を終えるのが惜しくなる。
そういった意味で「ホテルローヤル」は直木賞受賞で沸いた当時直ぐ購読したものの、ラストの節に入ってパタリと半年間は、読了するのが惜しかった。
味噌を寝かせるように自分の脳内で温めて、ラストの節を読み終えた時どうしようもなく切ない空虚感が押し寄せた、と同時に、愚かに情事に甘えて溺れる女たちが、愛しくなった。
リアルは本能的官能的にはならない、理性と平凡な日常が邪魔をする。
読書の魅力は、そんな常識をさらりと忘れて、旅へ引き込まれること。
日常ニ戻ル。
さてお仕事です!