叩き出しブレイク⑵
おわりに
いつからだろう、夢がなくなったのは。
子供の頃、しばらくやってこないと思っていた未来には、スポーツ選手でもミュージシャンでもなんでもいい、大きな夢があり、夢とはそういうものなんだと思っていた。
(中略)
けど今は、もう少し小さな夢がたくさん叶っているように思う。
初めて自分の布ができとき、はじめて傘のオーダーをもらったとき、はじめて雑誌に載ったとき、街で自分の傘を見かけたとき。
それらはとっても小さいことだけど、あ、そういえばこれは、夢というには大げさだけど、目標というか、憧れていたことが実現したんだな、と後から思う。
自分の傘が本になるとは夢にも思っていなかったけれど、こうして本があらかたできて、印刷前の見本をながめて、あー、これもひとつの小さな夢だったのかなと。
(中略)
前から僕とお付き合いしてくれる皆様が、ここまでイイダ傘店を育てててくれました。形式上、僕が著者となってしまったが、上の人たちがイイダ傘店を作っています。
飯田 純久
朝、カーテンを開けたら雪が積もっていた。
昼の太陽に照らされて融けてしまうのだが。
冬の寒いのは嫌い、でも雪の白いのは好きだ。
青空を見上げながら、融けないでって思って
イイダ傘店の本を思い出した。
熱望しているけれど、
実はまだ、オーダーに至っていない。
日々の生活には優先すべきことが多くて、
なかなか。
自分の贅沢を優先にはできなくて。
然るべき時に、
然るべき思いで、
オーダーできたら。
「夢」については、
ひっそりと思うことがあります。
今少し、絵を描きたい欲が枯れている。
白紙に向かうと、描けなくなる。
ナンテコトナイさ、と切り抜けたつもりで、
やっぱり少し疲れているのかも。
もう少し、もう少し頑張ろう。
何もかもが、
色々なことが、
当時の備忘録から変わってしまった。
でも、欲しいものだけは同じである。
枯渇する心にさす傘が欲しい。