たんぽぽの子供たち
たんぽぽの
綿毛を吹いて
見せてやる
いつかおまえも
飛んでゆくから
「たんぽぽの日々」
/俵万智・著
市橋織江・写真
表紙がたんぽぽ色で柔らかな上質紙。この紹介写真は色落ちしていますが、短歌の文字はオレンジ色で「ふわっと」浮き見えて今にも飛んで行きそう。このような視覚触覚の喜びは、電子書籍では得られない感動です。市橋織江さんの写真もとても繊細で情緒豊かで、ふと切なく。時と歌の物語を紡いでつなげる淡い色彩です。そして、短歌と写真に俵万智さんのエッセイが添えられていて。
子育てという日常に、優しい色で包む歌と写真と言葉。
親ならば誰しも、切なくなったり共感する歌が静かに並べられた子育て歌集です。ほんの少しだけ、抜粋させてください。
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「叱られて
泣いてわめいて
ふんばって
それでも母に
子はしがみつく」
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「子を預け
もの書く我の指先に
枯れ葉のような
音が生まれる」
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「親は子を
育ててきたというけれど
勝手に赤い
畑のトマト」
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「母さんは
いつもいつでもビリだった
ビリにはビリに
見える青空」※運動会にて
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「はじめての波
はじめての白い砂
はじめての風
はじめての海」
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「ぼくの見た
海は青くなかったと
折り紙の青
持ちて言うなり」
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「振り向かぬ
子を見送れり
振り向いた 時に振る手を
用意しながら」
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抜粋して思うところは、
この本は歌と写真、俵万智さんのエッセイと抱き合わせてページが芳しく立つものなので、文字だけでは伝えきれないなと思いました。特に、大切な人が亡くなって「いのち」との別れを歌ったページが一番好きなのですが、伝えきれなく。デジタルを経由するのが勿体ないくらいの繊細さなので、控えます。
この本も、朝読書用にって子供達に経由されているので、表紙の上質紙の鮮やかな黄色い角が折れたり擦れたりしている、幸せな本です。一生自分の本棚にいる本です。
母方祖母が、絶命するまで短歌を残した方でした。深く刻み込まれた皺のように晩年の歌は迫り来る歓喜と刹那があり、大切にしたい歌として残っています。
自分も、言葉を紡ぐことが好きなので、偶に短歌を繋げてみることがあります。日記というものは残したくないし後で読みたくないなと思うのですが、短歌に認めれば、その時の思想や情景ごと回想されるので、短歌の作法に恐れずに、自分も自分なりの短歌を残していこうと。こっそり思っています。